Comp(コンプレッサー)、Gate(ゲート) 実践


エンベロープ (envelope)と波形

コンプやゲートなどを使う場合 これらの知識が無いと
非常に不利となります 
今回 音源を加えて行きながら それらの効果について
実際の曲を使い 問題形式も併用し 進めて行きます。

始めにKick(BD)のエンベロープ (envelope)と波形を行います

問題1(初級)
このKick音は(一般的には)オープン、クローズ どちらの奏法のものでしょうか。


ローランドのComp音源 比較 サイト
http://www.roland.co.jp/FrontScene/1106_UA-55/index.html
を開き「sound check」を選択 
4つの楽器の Comp OFF ON の音源を比較して聴けます。

問題2(中級)
この音源は 音の違いをアピールしたいあまり
純粋に比較するには 難点がある音源もあります 
それは何でしょうか。



動画は 一時停止や指定した秒数に飛んだり 
自由にできますから これらを利用すれば非常に有効です。


動画
1、Kick 画面 説明
縦は 1〜19 Tr 
各 Trを 拡大すると 波形 振幅 が確認しやすくなります。
横は時間 単位は 秒 最大 0.001秒まで 拡大できます。


動画 (Kickは音量が大きいので音量設定に注意してから再生下さい)
2、Kick 音源
1Trは 原音
2Trは 0.5ms(0.0005秒)から切り離し 1秒間 無音にしてから 後の音をつなげて編集したものです。
3Tr 以降は 2Tr同様 表記の秒数から 切り離し 編集したものです。
これにより Attack Release など具体的な時間経過でどのように変化するか確認できます。
画面 左上の レベルメーターで 
音量を視覚でも確認できます。 
20〜30ms に ピークとなるのが確認できます。
6:30〜7:00 は 全Trをレベルメーターで確認できますが
この時(過大音量となるので)音量は小さくしてあります。


問題3(中級)
このような変化が分かると どのような事に応用できるか。


Comp(コンプレッサー)

音量を圧縮(Compressor)できる機材。

ギター、ベース などの演奏者は 主に音の粒を揃えたりするために使用しますが
PAやRecの場合 音圧感を出したり ピーク音を抑えたりする事に使用します。

THRESHOLD で設定(0〜−56dB)
した 音量レベルを境に 
RATIO で設定した 圧縮比
(1〜∞(LIM) ∞はリミッターとも呼ばれます) 
により音を圧縮
(ゲインリダクション(Gain Reduction)
します。


問題4(上級)
多くの機種で RATIO は 1〜∞ の範囲だが  ー5 〜 −1 は どのように使用するか。

RATIO の設定による 音の変化の動画
 3、comp Ratio
Thrsh= −25.3dB に固定し
Ratio を 1〜LIM(∞) に変化した音 
右にある 矢印は ゲイン リダクション メーター で
圧縮された量を確認できます(ピーク ホールド付)。

後半(1:00)からは
圧縮され音量が下がった分
Gain(出力レベル)を上げ 
サウンドを比較し易くしてあります。

問題5(初級〜中級)
サウンドを比較する場合 何故 音量差が無い方が良いか。

THRESHOLD の設定による 音の変化の動画
 4、comp Threshold
1.5秒 間の繰り返し設定にして 
AttackとReleaseはAuto(自動設定)
Ratio=LIM(∞)に固定し
Thrsh を 0〜 −56 dB に変化した音 
右にある 矢印は ゲイン リダクション メーター で
圧縮された量を確認できます

後半(2:00)からは
圧縮され音量が下がった分
Gain(出力レベル)を上げ 
サウンドを比較し易くしてあります。

圧縮されるほど 音が こもってきます 
S/N比も悪くなり 雑音が目立ってきます。
こもった音を補正する場合 EQ(イコライザー)で調整するのが
一般的です。 これらの音は 後で掲載予定です


Attack の設定による 音の変化の動画
5、Comp Attack
3秒間の繰り返し設定にして
Thrsh= −25.3dB、Ratio=LIM(∞)、Release=900ms(0.9秒)に固定し
Attackを 150〜0.2〜150ms に変化した音
(最初と最後は Comp=OFFの音が入っています)
書籍やHPに Attackの説明がありますが 
「音がThrshレベルを超えてから
Compが かかるまでの時間を設定」
とあります これらの文章を素直に解釈すると 
Thrshレベルを超えた音は 設定したAttack時間まで
Compは かからない事になりますが 
実際に検証してみましょう。

動画 7、compattack150ms th
Attack=150ms、Ratio=LIM(∞)、Release=900ms(0.9秒)に固定し
Thrsh を 0〜 −56 dB に変化した音です。
(動画 2、Kick 音源 3:50〜 で 150msまでの音が確認できますが
表2 でも 150msではAttack音がすでに過ぎ 音が減衰するRelease途中なのが分かります)

Thrsh を 0〜 −56 dB に変化させると 
−56dBに近づくほど 圧縮された音になっていますから
Attack設定値の所から圧縮が始まるのではなく 
Thrshレベルを超えた時から圧縮が (徐々に)開始され
Attack設定値の所から RATIOで設定した圧縮率となる
事が分かります。
Attack=50ms を例にしますと
下記 表3ではなく 表4のイメージとなります。

動画 2、Kick 音源 2:45〜 で 50msまでの音が確認でき
5、Comp Attack  0:40〜 で Attack=50msの音が確認できます


Release の設定による 音の変化の動画
6、Comp Release
原音〜
Thrsh=25.3dB、Ratio=LIM(∞) に固定し
Release を 3ms と 900ms(0.9秒) で比較しながら
Attack を 0.2〜150ms に変化した音です。


Thrsh=25.3dB、Ratio=LIM(∞)、Attack=0.2ms 
表5 は Release を 3ms
表6 は Release を 900ms(0.9秒)
に設定した イメージです。
詳細解説は次回


Attack 、Release 設定がついていない機種は
それらがAuto(自動設定)となります
Attack 、Release 設定は デリケートですので 
支障が無い限りは Auto の方が無難です。


Compで圧縮されるほど 音質の抜けは悪くなり こもった音になります。
Voの場合 主に サビのように声を張る部分で 一番Compが かかりますが
Voがそのような時 マイクを口から離せは Compは その分かかりませんから
こもった音も その分回避できます。

ライブでは マイクを口から離すと 回り込み音が大きくなりますが 
口から離さずに Compで圧縮しても Voが圧縮された分
回り込み音の比率が大きくなるので 
(Voの声量とマイクとの距離などにもよりますが)大差はありません。
Charice - To Love You More は マイクの角度なども良く
回り込み音が一番軽減される例です。


Gate(ゲート)

Eギター などの演奏者は 歪み系 音の雑音(ノイズ)をカットするために使用しますが
PAやRec では 主に ドラム(太鼓)の 余分な余韻をカットして音を整えたり
回り込み(かぶり)音や雑音(ノイズ)をカットする事に使用します。

THRESHOLD で設定(0〜−84dB)
した 音量レベルを境に 
音をカット(圧縮比=∞) します。 

THRESHOLD の設定による 音の変化の動画
Gate Thresh

Thrsh を −84 〜 0  dB に変化した音 
(Attack=1ms、Release=0.3s )
0dBに近づくほど 余韻(Release)が短くなります。
(2、Kick 音源 の10〜19Tr の前半ように 余韻がカットされます)
表7は Thrsh=−30dB、
表8は Thrsh=−21dB、  に設定のイメージ



Attack の設定による 音の変化の動画
Gate Attack
Attack を 0.02〜500 ms に変化した音 
表9 は Attack= 5ms、
表10 は Attack=75ms、
表11 は Attack=500ms、  に設定のイメージ

Release の設定による 音の変化の動画
Gate Release
Attack=0.1ms
Release を 0.1ms〜2s  に変化した音 
表12 は Release= 0.1ms、
表13 は Release= 0.47s  に設定のイメージ


太鼓の余韻(リリース)は THRESHOLDで大まか(やや短め)に設定して 
微調整を Release で 行うと イメージがつかみやすい。



RATIO で カットする圧縮比(1〜∞)も 設定できるのは GATEではなく 
エキスパンダー(Expander) と呼ばれます。

Gate RATIO


Gate Release も 同じように ある程度 
音の余韻の長さを調整できます。


Kick 音源 Gate、Comp 設定 音決め 例

kick
1.5秒間の繰り返し 

Gate で余分な余韻をカットし タイトな音に調整

Comp 調整 
(この機種は GateとCompの ゲイン リダクション メーターが
兼用なので Gate OFFで Compの ゲイン リダクション値を確認)
今回 Attack 、Release 設定は手動(Auto は使用せず)

EQ で音質調整 

Gate リバーブ を加え 調整  他のパートと馴染みやすくする(Recでは必須)

最後に
Comp TH= −25dBとー30dB の比較


これで分かる通り
ドラム(太鼓類)の調整において 
Gate と EQ 設定は非常に重要となります
これらに比べると 
Comp類 は地味で かけすぎると逆効果ですが 
Gate や EQ では出せない 深みなどの調整となり 
太鼓類は オーバーレベル になりやすく その処置などにも有効です

今回の Kick原音は Release の変化などの確認のため
余韻が長い 原音を使用しました 
ポップス〜ロック系のKickでは 余韻の短い 原音の方が 調整、加工しやすく
このジャンルに合う音が作りやすいので 
通常スタジオ録音では フロントヘッド(ペダルで打たない方のヘッド)を
取り外します。


Kick音のEQ調整
kick EQ
Kickにおける EQのポイント周波数は サイズやミュートなどにより異なりますが 
Kickは 低音は60Hzあたり がポイントとなるのが一般的で
高音は 1Kz〜7KHz 間で 人により意見が異なります。
結果として 曲全体のサウンドが良くなれば 何でもあり です。


Gateで 回り込み(かぶり)音のカット

Snのマイクに Kick、HH、Tom などの音が 回り込んでいるので
これらをGateでカットしてみます 
(この音源は ゲート・リバーブが常にかかっています)
Gate KeyFillter

Key Fillter は 
HPF、LPF などにより 感度(センサー)音域を限定させ 
他の音域の音でGateが開かないようにできます。
主にドラム(太鼓)に使用されます。

回り込み音を カットするほど Snの音に影響するので 
どの程度カットするかは ケースバイケースですが 
結果として 曲全体のサウンドが良くなれば 何でもあり です。 


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